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「あっつーい」
まだ6月だというのに、何なのこの暑さは。これぞ蒸し風呂状態。
私はシャツの首元をパタパタと扇いだ。
「ストップ!!地球温暖化ぁああぁぁ」
「まぁまぁ、もうすぐ夏なんだから暑いのは当たり前でしょ」
「そうなんだけどさぁ」
でもさぁ、この暑さは異常だよ。と、隣を歩く友に愚痴り続ける。ついで、う~う~と唸りなってみた。
でも、愚痴ったって、唸ったって、暑いのは変わらない。
ダダダダ
なにやら、後ろから走ってくる音が聞こえてきた。気になって振り向いた瞬間。
「こ~とちゃん」
「ぐやぁ!!」
私を呼ぶ聞きなれた声と共に、首筋に冷たいモノが当たった。にしても、我ながら可愛くない叫び声だなぁ。
「あ。有田先輩、おはようございます」
「おはよう、未来ちゃん」
「もう、バカ翔!止めてよ」
「だってお前、゙暑い゙って言ったじゃん」
そう言って、目の前で保冷剤を持つのは、幼なじみの有田 翔。一つ歳上だけど、今さら敬語を使う気にはなれない。なにしろ女好きで、単純バカなんだから。
「だからって、急に保冷剤を首に当てるなんてあり得ない!!」
「ははは。じゃあ、またね未来ちゃん」
「あ、はい」
私が怒ると、奴は保冷剤をお弁当袋にしまって、全速力で退散していく。
さすがに一つ歳上の、それも男に、走って追い掛けられる自信なんてない私は、盛大にため息を吐いた。
「嵐みたいだね…先輩」
「もっと酷いよ」
「でもさ、有田先輩って格好良いよねぇ」
「はい?」
あいつが格好良い?
ないないない。
私よりガキみたいな性格してるし、童顔だし。格好良いっていうのは、もっとこう
「根深くんみたいなのを、格好良いって言うんじゃない?」
「博が格好良いのは、当然のことだもん!!」
「わ、わかってる。わかってるから」
ずんずん詰め寄って来る未来に、私はのけぞる
「先輩は、標準的に格好良いの」
「う、ん…?」
根深くん=超モテ男
頭脳明晰、スポーツ万能。なんでも出来ちゃう、学校のアイドル的存在。
つまり未来が言いたいのは、根深くんは格好良い以上に格好良いってこと。翔はただの格好良いに過ぎないってわけだ
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