登校、飛び降り、下校

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「琴音?」 「…」 「こーとーねっ!」 「わっ」 ゙ビクッ゙ 耳元で未来が叫んだ。見やれば、何か不貞腐れている。 あ、もしかして、私呼ばれてたのに気付かなかった? 「ご、ごめん、ぼーっとしてた」 「本当に自覚ないの?」 「え、何が?」 今度は訝しげな表情の未来に、私は首をかしげた。 そんな私に、未来はため息を吐く。私は、いっそう首をかしげる。 「本当、鈍いよね」 「私が?」 私の頭の上に?が増える。自分では、そんなつもりはないんだけど 鈍い っていうのは、よく言われる。でも、そんな事言ったって、私はこうなんだから仕方がない。 「嫉妬、してたんでしょ?」 「し…何?」 「やきもちのこと。あんた、一応文系でしょ」 「あは、あははは」 私はぎこちなく笑う。 文系…っていうけど、まだマシなだけで、得意なワケじゃない。 やきもちかぁ。 「かもね」 「あっさり、認めるんだ?」 「うん。何て言うか、お兄ちゃんを取られた妹の気分」 「…あっそ」 呆れたように、未来は足早に歩き始めた。 「ちょ、待ってよ」 私は、それを追い掛けながら、校門を抜けた。 下駄箱で靴をはき換えて、階段を上りながら、私が未来のご機嫌を取っていると… 「おはよ」 「あ、根深くん。おはよう」 「おはよう!」 私のご機嫌とりなんて、全く聞く耳を持たなかった未来が、元気に挨拶をする さっきまでの不機嫌さなんて嘘みたいに、キラキラした目で根深くんを見てるし 「未来は今日も元気だね」 「うん。もう絶好調!!」 さらにいっそう元気を増す未来を見ていると、何か視線を感じた。 少し目線を上げれば、根深くんと目が合う。 視線の出所は、根深くんだ。 私は無言で首をかしげて、根深くんを見つめ返す。 すると、彼はにっこり(ファンが見たら黄色い声の上がりそうな笑顔で)笑った。 キーンコーン… 「あ、予鈴」 「鳴っちゃった。急ご」 「うん」 チャイムの音に、私達は三階にある教室へと急いだ。 教室のドアをあければ、見慣れた光景があった。 入学した時に比べたら、だいぶ緩んできたクラスの雰囲気に、安堵する。 「あ、根深くん。おはよう」 「きゃー、おはよう。」 クラス中の女子が、根深くんに寄ってたかる。 きゃー、て… どこから、そんな声出てんのよ。なんて思いつつ、私は合間を縫って、なんとか自席に辿り着いた。 朝から戦争だよ…。本当、根深くんはモテるよねぇ きゃいきゃいと、女子に囲まれる彼を見て、しみじみ思った。 .
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