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ふと、また視線を感じた。
…もしかして、また?
あ。やっぱり目が合った。
私の予想は的中。視線攻撃は、根深くんから
私、何か変?
寝癖とか?
気になって、髪の毛をいじってみるけど、いつも通り。
寝癖じゃないのか
じゃあ、何だろ?
ガラガラ
「こらー。さっさと席に着けよ、お前ら」
「はーい」
先生が、教室に入ってきたところで、私はそっちに意識をひかれて、目を反らす。
次に視線を戻した時には、根深くんはもう前を向いていた。
一番後ろの一番端。
出席名簿が一番最後の私の席は、人間観察がしやすい。
今日は寝癖がひどい。とか
携帯いじってる。とか
寝てる。とか
とにかく、皆がそれぞれ何をしてるのか、よくわかる。
根深くんは、斜め前の席。
最近、よく目が合うんだよね。今日が特別ってわけじゃないし、気にしない方がいいのかも知れない
ま、いっか
私は、考えるのを止めた。
「はーい。じゃあ、一限目の準備でもしとけ」
あ。何も聞いてなかった…。
「琴音~。次、移動だよ」
「あ、うん。今行く」
「予習した?」
「うーん。ちょっとだけ」
他愛ない会話。
「…て……や」
物音と、女子の声。
「未来、今何か言った?」
「何も言ってないよ。どうかしたの?」
「今、何か声が…?」
今度は男子の声。
一体どこから聞こえてるのか、私は辺りを見回した。
窓の外?
「あ!!」
「なに、なに?」
女子が、男子に囲まれる。
何が原因かは、わからないけど、喧嘩してる雰囲気。
「お前、うざい」
「や」
女の子一人を、男の子数人で罵倒してる。
どうしよう…
こういうとき、どうしたらいいの?
私は助けを求めて、未来をみるけど、未来も私を見てるし…
「おい!!」
「あ…翔…」
「先輩!!」
偶然通りかかったのか、翔がやってきて、男子達に呼びかけた。
「お前ら、女子囲んでなにやってんだ」
「げ、上級生だぜ」
「でも、弱そうだし」
「こっちのが人数多いし」
数人の男子はこそこそ相談している。
そんな間に、翔が女の子を庇うように背中に隠した。
あいつ、喧嘩弱いクセにっ
私は、さらに焦った。
安心なんてしてらんない。隣の未来はホッとしてるけど、私はむしろ心配事が増えただけ
男子達は、どう考えたって喧嘩する気満々だし…。
翔はこういうとき、一歩だって引き下がらない。
私はヒヤヒヤしながら、それを見つめた。
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