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「琴音、ここは先輩に任せて、授業行こ?遅れちゃうよ?」
「翔だから、任せてられないの!!」
「何で?」
「だって、あいつ…」
弱いんだもん。
って言いたかったのに、言うよりも早く、人の殴られる鈍い音が聞こえてきた。
「あ~、見てられないっ」
「…っ?琴ちゃん!?」
「受け止めてよ!!」
「え、まさか、お前」
私が2階の窓から、翔目がけて思い切り飛び降りるつもりなのがわかったらしい。
飛び降りぎわに、未来に耳打ちして、私はいっきに体を乗り出す。
「ちょ、琴音!!?」
「え、え?」
未来が、私を止めようとするけど、この際無視。下にいる男子共が動揺してるけど、これも無視。
ただ、覚悟を決めて私を受け止めようとする翔だけをみる。
ばふっ
「ナイスキャッチ☆」
「はぁ~。琴ちゃん…無茶しすぎっ。イテテ」
「だって、見てられなかったんだもん」
「あ…あの」
か細い声が、後ろから聞こえた。これは、さっきの…
私が後ろを振り返ると、もじもじした女の子
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。こいつが無茶するのも、受け止めるのも、よくあるから」
うるさいなぁ。私は、翔を睨んで、黙らせる。
目の前で固まってる男子を見れば、はっとしたかのように、動きだした。
「お前ら、他人の話に首突っ込むんじゃねーよ!!」
「嫌がってる女の子に寄ってたかってるあんたらに言われたくないわよ!!」
こんな奴ら、女の敵だ!!
とは、言ったものの…私だって喧嘩が強いわけじゃない。
じゃあ、何で降りてきたかって?
未来の準備が整うまでの時間稼ぎ。こんな時こそ、未来の特技を活かせるチャンスだもん
あと…ちょっと
「アンタ達、絶対モテなんでしょ!!!」
「な、てめぇ」
「ふふん。怒るってことは認めるってことですぅ」
私の暴言に怒った男子が、こっちへ向かってくる。
あ…ちょっと言い過ぎた?
誤魔化せ私!!!!
「あ、え、えーと…。その…い、言いすぎましたぁ」
「もう、遅ぇんだよ。」
怖くなって怯めば、急に強い力で後ろに引っ張られる。
「バカ」
「あ…」
すぐに翔の背中が目の前にやってくる。翔の背中…こんな、おっきかったっけ?
少しドキッとした。
こんな感じ、前にもあった。
目の前の翔が殴られる覚悟をしたけど…殴られるその一歩手間で
「こら!!何してるの、あなたたち。今行くから、ちょっと待ってなさい!」
田中先生の怒声が響く。
私は、その声にホッとした。
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