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毎日寝不足の体は悲鳴を上げる。
眠い・・・眠い・・・
もしも自分が死ぬのならば、それはそれで本望だ。
このまま、一生眠り続けてもいい。
愛する母と一緒に、永遠に眠れるのならば、梓は幸せなのかも知れない。
それでも、まだ、やっぱり今は死にたくない。
何も楽しむ事もなく、毎日を送っている梓。
でも、心のどこかでは、やっぱり人生を楽しみたい気持ちもあった。
でも、人生を楽しむ道を選ぶのは、母を放棄するのと同じ事なのだ。
眠気を吹き飛ばすために、休憩時間になると顔を何度も洗った。
お金が欲しい・・・もっと、もっと・・・
そんな事を考えていると、いつの間にか、梓の後ろに寛人が立っていた。
「アズちゃん、大丈夫?」
何度も顔を洗っている梓が心配だったようだ。
「大丈夫です。」
梓は失礼のない程度に答えた。
「でも、顔色悪いよ?」
お金持ちで裕福な寛人の肌つやは、梓よりもよっぽど綺麗だった。
「大丈夫ですから。そんなに心配しないでください。」
そう言うと、持ち前の営業スマイルを見せた。
「お金に困ってるの?」
寛人が梓にそう訊ねた。
もし、ここでそうですと認めたら、寛人は梓にお金をくれるのだろうか?
梓は、そんな事を一瞬考えた。
だが、世の中はそんなに甘くはない。
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