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「何で?私は迷惑だって、言ってるんです・・・」
梓を見つめる寛人の眼差しは、純粋そのものだった。
目を逸らしてそう告げたが、寛人はひるまなかった。
「アズちゃんが気になるんだ。確かに、お店に来たのは単なる道楽というか、自分のストレス発散のためというか・・・
とにかくどうやって説明していいかわからないけど・・・
俺は、ただ、なんだか、アズちゃんをほっておけなくて・・・」
そう言うと、梓の手をぎゅっと握り締めた。
「やめて・・・」
梓はそう言うと、その手を振り解いた。
「私には、恋や、愛なんて要らない。欲しいのはお金だけよ。」
一瞬クラッとしたが、それでも母親を見捨てる事など、梓には出来なかった。
いや、見捨てるのではない、見捨てられるのが怖かった。
母が居なくなることは、梓を天涯孤独にするようなものだった。
「お金は出すよ。これで足りないなら、俺、デートしたりする時も、時給払うから・・・」
寛人がなぜそこまでして、梓に好意を寄せているのか、梓にはわからなかった。
「勝手にすればいい・・・私はずっと、このままだから。」
そう言うと、寛人の席を立った。
「どこ行くの?」
「今日はもう寛人さんとは、話したくない。」
そう言うと、寛人を背に、テーブルを離れた。
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