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相変わらず、睡眠不足が続いている。
梓は眠い体を起こして、病院へと向った。
驚く事に、病院の前には、楓が立っていた。
「アズちゃん、おはよう。」
「楓さん・・・」
梓は、寛人の事で、何だか楓に申し訳ないような気がした。
「アズちゃん、大変なところごめんね・・・私さ、本当はアズちゃんのお母さんがここに居る事、最初から知ってたの・・・」
楓がそう言うと、梓は驚いた。
「姉がね、ここの看護婦をしていてね。」
その言葉で、全てを理解した。
「最初はアズちゃんって知らなかったけど、すごく大変な女の子がいるって聞いてた。
だから、寛人さんにも、昨夜本当の事を言ったの・・・
ごめんね・・・
私、アズちゃんもわかってると思うけど、寛人さんが好きなの・・・」
楓の言葉に、梓は何も言えなかった。
本当ならば、彼女のような優しい女が幸せになるべきだと、梓は思った。
「私には、お金が必要です。それだけなんです。寛人さんには、もう私に構わないでほしいって、伝えたました。」
梓の言葉に、楓は悲しそうに微笑んだ。
「違うのよ・・・寛人さんがアズちゃんの事好きなら、それで構わないの・・・私はね、アズちゃんのように、頑張っている人が大好きよ。
だけど・・・時々そうは思っても、辛くなる事があるの。
それをアズちゃんに聞いて欲しくて・・・」
長い間、人と深く関わる事を、梓は当たり前のように避けてきた。
そして、これからもそうするつもりだった。
「楓さん、ごめんなさい。
私は、楓さんの友達にはなれない。
私は、誰とも関わりたくないの。」
梓の言葉は、楓の心の奥を突き刺すようだった。
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