142人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は、道端に紛れて落ちているお金は、全て拾います。
それに、そのお金に例え、犬の糞がついていても、私には一円でもお金です。
そんな底辺の人間と、楓さんのような心の綺麗な人が、分かり合えるわけがないんです。
それじゃ、私はもう行きます。
寛人さんが本当の事を知ったからと言って、私は何も変わりませんから。
余計な事はしないでください。」
梓は、そう言うと、病室に向った。
梓の心は、楓や寛人に十分、掻き乱されていた。
なぜか、今日は母を見ても、上の空だった。
寛人の優しい笑顔や、大きな手。
それから、楓の優しい眼差し。
それが、母を越えそうな気がして、梓は怖くなった。
「ごめんね、お母さん、私はちゃんと守るから・・・余所見しないから・・・
また、明日も来るね・・・」
そう言うと、病室を後にした。
こんな日は、心が悲鳴を上げる。
それでも、自分に言い聞かせた。
私は守銭奴、お金が全て。
お母さん、私はあなたと、お金を愛し続けます。
最初のコメントを投稿しよう!