第二話

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病院を後にして、いつものように指定されたデパートへ向った。 販売するものには、レトルトのハンバーグだ。 ものすごくおいしいわけでもなく、値段が安いわけでもない。 そんな品物を頑張って売ることの意味は、何もない。 だが、この品物でご飯を食べている人がいる。 そして、またそれを売るために梓が雇われているのだ。 世の中は、そう思うと、すべてお金なのだ。 人間は、生きるために、お金を稼ぐ。 でも、それだけでは、人はとても悲しすぎる。 何かが足りない。 梓の中で、少しずつ、何かが変わりつつあった。 レトルトのハンバーグを湯銭して、一口サイズにカットした。 それを爪楊枝に刺して、いつものように販売を始める。 (お金・・・お金・・・) そう言い聞かせながらも、寛人の笑顔が浮かんで来た。 好きになってはいけないと、呪文のように言い聞かせ、自分を縛りつける。 楓が心底惚れるほど、寛人は魅力的な男だ。 それでも、梓はその思いを、断ち切った。 母の姿を思い出した。 母を失うより辛い事は、この世でない。 その思いが、梓をまた元の梓に戻していくのだった。
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