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梓は、楓から目が離せなかった。
彼女の笑顔が、いつもどこか寂しそうなのは、もしかしたら、寛人に振られるということよりも、もっと悲しい思いを背負っているのかも知れない。
どちらにしても、楓という人間は本当にピュアだ。
キャバクラで働くと決めた時、この世界の人間というのは、お金に執着している者ばかりだと思っていた。
でも、この世界の女達もまた、男と接する仕事をしながらも、男からの本当の愛を求めている気がする。
愛って、何だろう・・・
梓の胸の中には、いつも母への愛で溢れている。
でも、なぜだろう・・・
この満たされない思いは・・・
どう頑張っても、報われる事のない愛。
失う事も怖いが、今守っている事にも苦痛を感じるようになっていた。
足元がふらふらとして、視界がぼやけてきた。
笑っているのか、何を話しているのか、わからなくなってきた。
もう休もうか・・・
いや、休んだらだめだ・・・
その葛藤が頭の中で繰り返される。
それでも、目の前がチカチカして、そのまま真っ暗になっていく。
気力だけでは、どうする事もできない、人の悲しいまでの肉体。
梓は意識を失った。
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