第二話

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しばらくして目が覚めると、梓を心配そうに見ている寛人の姿があった。 「アズちゃん、大丈夫?」 寛人の優しい声が、梓の胸を苦しくする。 「大丈夫です・・・」 そう答えてみても、頭の中にはお金の心配もあった。 明日には払わなければいけない、母の入院費。 その金額の莫大さに、眩暈がするのだ。 「寛人さん、お金貸してください!」 梓の言葉に、寛人は頷いた。 「いくら貸せばいい?」 多分、寛人を好きになっている気がする。 それでも、好きな人からお金を借りる虚しい行為も、梓はするしかなかったのだ。 「2万です・・・今日仕事で貰うはずだった分です・・・」 「わかった。」 そう言うと、寛人は財布からお金を出した。 「それから、ここまで運んでくださってありがとうございました。」 梓は自分の部屋に、寛人が連れてきてくれた事が嬉しかった。 好きになってはいけなくても、でも、一度惹かれてしまうと、もう思いを止める事は出来ない。 普通の人ならば・・・ 梓は、寛人に惹かれていながらも、その感情を止めていた。 「アズちゃん、大変なのはわかるけど、自分の体を壊したら意味がないよ・・・」 寛人の悲しそうな顔に、梓まで悲しい気持ちになってくる。 でも、世の中の不幸を全部背負う気持ちで生きてきた。 そうしなければ、がむしゃらになることなど出来なかったからだ。 ここで放棄したら、死ぬまで後悔する気がするからだ。 「私は、大丈夫です。」 梓はそう言うと、寛人に微笑んだ。 皮肉なまでに、梓は肝心な時に泣けない女になっていた。
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