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「ねぇ、アズちゃん、後藤さんの事どう思う?」
「どうって?」
「実はね、付き合ってって言われているの。」
楓はそう言いながら、寂しそうに微笑んだ。
「寛人さんの事はどうするんですか?」
梓の問いに、今にも泣き出しそうな楓。
「諦めるわ・・・だって、どんなに思っても、彼は私には届かない存在だから・・・」
「だから、私が後藤さんはいいんじゃないですか?と言ったら、じゃ付き合って好きになれるんですね?」
梓がそう言うと、楓は少し俯きながら、唇を噛み締めた。
「寂しいのよ・・・アズちゃんにはわからないかも知れないけど、私、寂しくて・・・」
「わかりますよ。」
梓の言葉に、楓は瞳に涙を溜めながら、梓を見つめた。
「楓さん、私はお金しか信じていません。
でも、あなたの事は少し信じています。」
梓がそう言うと、楓は堪えていた涙が溢れた。
それからしばらく泣き続けると、梓に向って言った。
「アズちゃん、さっきのことは忘れて・・・
さて、仕事頑張ろうね!」
楓は涙を拭うと、梓に微笑んだ。
梓はいつものように、楓の隣で接客を始めた。
楓は、魅力的な女性だ。
人気NO1になるのも頷けるほどの気配りが出来る。
そんな彼女でも、手に入らないものがあるのだ。
人の心・・・
それこそは、お金で買えないものなのかも知れない。
梓はそう思った。
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