第三話

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出口のない迷路に迷い込んだような気持ちになった。 本当に愛が全てならば、なぜお金が必要なのだろう。 金の切れ目が縁の切れ目。 その言葉は、多少なりとも正しいと梓は思っている。 綺麗事を並べても、生活が出来なければ愛する事も出来ない。 それが社会というものなのだ。 そして、その社会で生きていくためには、ルールに従うしかない。 病院へ入院すれば、お金を払い、ご飯を食べればお金を払う。 大人になるということは、何もいいことばかりじゃない。 子供の頃に抱いた夢が、どんどん壊されていく。 お金・・・そんなものに魂を売らなければいけない自分。 「アズちゃん、どうしたの?」 つい、考え込んでしまった梓を見て、寛人が心配そうに覗き込んだ。 梓は邪念を払いのけた。 「何でもないです。ごめんなさい。」 寛人は梓にはもったいないぐらい、優しい男だ。 裕福な男は、お金にせこせこしていない分、心に余裕があるように感じる。 人は自分にないものを求めてしまうというが、それも納得できる気がした。 だけど・・・ 寛人に恋をすることで、自分を見失い、駄目になる事が梓にはわかった。 出口のない迷路に、ゴールを見つけてはいけない。 ずっと、さ迷い続けなければいけないのだ。
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