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いつもなら、派遣先のデパートへ向う途中、道端に目を凝らしながら歩いている梓だが、今日は寛人の事ばかり考えていた。
寛人はきっと、女に困った事がないだろう。
もし、今寛人の想いに答え、交際したとしても、梓はいずれ捨てられるだろう。
父は、何度も母を裏切って、浮気を繰り返してきたのだ。
母は本当に可哀想な女だった。
今だって病院で、じっと眠ったまま生きているのだ。
父は、母の意識がなくなると同時に、すぐに延命処置をしないと言った。
まるで、母がこの世から居なくなる事を望んでいるかのように・・・
それが許せなかった。
そして、今も許せない。
あんな男、死ねばいいんだ。
寛人だって、父のようにならないとは限らない。
現に、キャバクラに来ている男に、ろくな男はいないんだ。
梓はまた、そんな風に考えて、自分の気持ちをセーブした。
でも、やっぱりどんなに寛人を心の中で貶しても、梓の脳裏には、寛人の優しい笑顔が刻まれていた。
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