第三話

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いつもなら、派遣先のデパートへ向う途中、道端に目を凝らしながら歩いている梓だが、今日は寛人の事ばかり考えていた。 寛人はきっと、女に困った事がないだろう。 もし、今寛人の想いに答え、交際したとしても、梓はいずれ捨てられるだろう。 父は、何度も母を裏切って、浮気を繰り返してきたのだ。 母は本当に可哀想な女だった。 今だって病院で、じっと眠ったまま生きているのだ。 父は、母の意識がなくなると同時に、すぐに延命処置をしないと言った。 まるで、母がこの世から居なくなる事を望んでいるかのように・・・ それが許せなかった。 そして、今も許せない。 あんな男、死ねばいいんだ。 寛人だって、父のようにならないとは限らない。 現に、キャバクラに来ている男に、ろくな男はいないんだ。 梓はまた、そんな風に考えて、自分の気持ちをセーブした。 でも、やっぱりどんなに寛人を心の中で貶しても、梓の脳裏には、寛人の優しい笑顔が刻まれていた。
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