第三話

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寛人への想いを、認めるべきか、認めないべきか。 人を失い、愛を失う恐怖が、梓の心を襲った。 お金!! もう一度、そう言い聞かせ、販売の用意を急いだ。 どんなに強くなりたいと願っても、強くなれない自分が駄目な人間に思えてくるのだ。 作り笑顔で販売を始める。 「いらっしゃいませ。今晩のおかずにいかがですか? どうぞ。」 試食品を差し出すと、お客は嬉しそうにそれを受け取り、子供に手渡した。 「どう?」 子供はそれを口に運ぶと、 「おいしい!」 と笑った。 「お姉さん、これ3つ下さい。」 「あ、はい!」 お客は商品を3つ籠に入れて、子供と一緒に進んで行く。 (あの人、食べてないのに・・・) 子供が美味しいと言った言葉を信じて、あのお客は商品を買って行った。 3つ・・・きっと、旦那の分だろう。 幸せな家族・・・幸せな笑顔。 かつては、梓も幸せだった頃があった。 どうして、幸せは年を取るごとに消えていくのだろう。 どうして、大人になると、見たくないものまで、見えてくるのだろう。 それでも、それに打ち勝って行くことが、強い大人になることなのだと、この時の梓には知る由もなかった。 ただ、人を羨むばかりだった。
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