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病室を出て、しばらく歩き続けた。
道端に無造作に落とされた10円を見つけると、梓はそれを拾い上げ、ポケットに入れた。
太陽が照り付けているのに、心の中は闇のようだ。
こうして、がむしゃらにお金だけを追い求めているうちは、まだマシなのかもしれない。
もし、今、母が亡くなったら、梓は何のために生きているのかわからなくなる気がした。
とにかく、一円でも多くお金を稼がなければ・・・
もっといい個室で、母がリラックスした状態で過ごせるように、頑張らなければ・・・
泣いている場合じゃないのだ。
病院は待ってはくれない。
お金を稼がなければ。
梓は、その足でデパートへ向った。
今日の「マネキン」をするデパートは、大手のデパートだ。
売る品物は、ウィンナーだ。
梓はデパートに入ると、指定の服とエプロンをして、手早く準備を済ませた。
何も楽しくない日常。
苦しいだけの日々。
でも、命は待ってはくれない。
お金をもっと、もっと、稼がなければいけない。
苦しくても、嘆いても、母を助けられるのは、梓だけなのだ。
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