第一話

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店頭に立って、ウィンナーを焼き始めた。 いつもと変わらない、マニュアル通りの接客をする。 この商品を必要以上に売ったからと言って、梓のお金になるわけじゃない。 「いらっしゃいませ。一口いかがですか? お子様のお弁当や、時間のない日に最適ですよ。」 そう声を掛けていると、店長がやって来た。 「小島さん。」 「はい。」 「今から、社長と専務が見えるから、もうちょっと笑顔で頼むよ。」 「わかりました。」 たかが、1日雇われ「マネキン」の梓が、社長や専務に認められるわけもない。 だから、素直に答えたが、梓はいつもと変わらない接客をした。 「いらっしゃいませ。一口いかがですか?」 向こうの方から、背広を来た連中がやってくるのがわかった。 興味はない。 梓は、何の緊張感もなかった。 「いらっしゃいませ。一口いかがですか?」 背広の連中は、梓に見向きもしないで、通り過ぎて行く。 それはわかっていた。 だから、梓には関係なかったのだ。 だが、一人の男が梓の方を向いた。 それは、寛人だった。
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