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目を覚ますと、白い、見知らぬ 天井が目に入って来た。 全身にけだるさを感じ、体が 動かなかった。口に被せられた 人工呼吸器やいろいろな機械が、 体に繋げられていた。 目の端で看護師達が慌ただしく 動いているのが見えた。それから すぐに、白衣を着た中年の男性が 目の前に現れた。何かを言って いるようだったが、再び強い 眠気が襲ってきて、再び目を 閉じた。 もう一度目を覚ました時は、 以前よりも意識がはっきりと していた。寝起きの虚ろな状態で いると、前に見た白衣の中年男性 が今度はゆっくりとやって来た。 「お目覚めのようだね。」 ベッドの傍らに置いてあった イスに座りながらそう言った。 ベッドの上の女は首を医者の ほうへ向けた。 「まだ、頭がボーッとしている でしょう。」 女は医者を見ながら黙っていた。 「もう少し意識が戻った頃に また来ます。」 医者はそう言うと、病室から 出て行った。 女は虚ろな状態で、首だけを 動かして、辺りを見回してみた。 ここがどこかはわかったが、 何故ここにいるのかは、全く わからなかった。
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