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「いいよいいよ。そのかわりアイス奢りね」
ぱっちりとウィンクする七海に瑠璃はクスリと笑いを零して頷く。
「じゃ、また後でね」
離れた手の温もりに一抹の不安を感じた瑠璃だったが一つ深呼吸をして保健室に入った。
「失礼します」
「おや瑠璃ちゃん。今日はどうしたんだい?」
白を基準とした保健室に佇む白衣の男性。
彼の顔を見ると不思議と心が落ち着く。
不思議な先生。
「すいません、ちょっと体調が悪くて…」
「顔色が悪いね。こっちにおいで。熱を計ろう」
瑠璃はコクンと頷いて体温計を受け取りソファーに座る。
彼は金糸雀仁(かなりあ じん)。
特徴的な名前なのですぐに覚えられた。
最初に来たとき保険医が男と聞いて荷が重たくなった瑠璃だったが合ってみたらさほど苦にはならなかった。
穏やかでとても優しくて同年代の男子とは違う落ち着いた不思議な人。
密かに女子から人気があるらしい。
だから仮病を使って保健室に来る女子が多いとかなんとか。
某親友からの情報だ。
「仁先生」
「ん?」
「先生って結婚しないんですか?」
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