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「瑠璃ちゃんっ?大丈夫か!?」
身体を抱きしめて身体を震わせる瑠璃に、木元は慌てて自分のブレザーを脱ぎ肩にかける。
当たりを見回して椅子を見つけると瑠璃の身体を支えてそこに座らせた。
「今あったかい飲みもん買ってくるから待っててやっ」
駆けて行く足音が何重にも聞こえて瑠璃は耳を塞ぐ。
(来た…)
否応なしに干渉してくる霊の気配に背筋が凍る。
「うぅっ」
胃液が逆流してくるような感覚に瑠璃は口元を抑えた。
『ママ…。寒いよ』
『たすけて…、お腹すいたよ』
小さな女の子の悲しい叫び。
命の灯火が弱っていく。
死を感じる。
「!」
身体が…っ 勝手に動く。
『おいで…』
少女の声が直接頭に響くと同時にヅキヅキと脳天が痛む。
これは…。
どうやら最悪の展開のようだ。
(憑依された…っ)
この場合まず無事に帰れたことがない瑠璃は心が竦(すく)むのを感じた。
故意的に事故に引きずり込まれるか、それとも屋上から落とされるか、考えただけでも冷や汗ものだ。
どんどん人気のない所へと足が進んで行くのに止められない。
(どこに行く気なの)
…
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