憑依

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暗いトンネルを潜ると道が開き林に出た。 林の間から微かに太陽の光がさしている。 さしているはずなのに、辺りは黒い霧が漂よって薄気味悪い。 酷い場所だ。 黒い邪念が林にあるマンホールを中心に渦を捲いており、その渦が誘うように身体にまとわりついてくる。 「いや…」 瑠璃にはあのマンホールに見覚えがあった。 たくさんの血と、肉が腐った悪臭。 マンホールがまるで待ちわびたかのように独りでに開く。 『…だずげで』 「ひっ!?」 真っ暗なマンホールから幾数にも伸びる冷たい手が足を掴んだ。 そのまま引っ張られた瑠璃はバランスを崩して地面に激突し、気絶しそうになったがここで気を失えば確実に死ぬとわかっていたので踏ん張る。 「はぁ…はぁ…」 頭がクラクラする。 ズルズルと瑠璃の身体は引きずられていきマンホールへと誘(いざな)われていく。 マンホールの穴からたくさんの子どもが血の涙を流して助けを求めていた。 『ダズゲデ』 『ダズゲデ』 『ダズゲデ』 『ダズゲデ』 『サミしいよう…』 『ごごがら゛だじで』 胸に広がっていく。 …
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