憑依

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生ぬるい液体が何度も頬を滑り落ちる。 気持ち悪くて拭おうとしたのに身体が動かなくて不思議に思った。 『とーさぁん…?』 あぁ…、なんで動けないのかわかった。 お父さんが抱きしめてるからだ。 耳元で苦しそうな息遣いが聞こえる。 『るり…っ』 『や、…やだよ』 子どもの姿の私は背中に手を回して抱きついていた。 お父さんの背中にはヌルヌルしたものがついていてポタポタと雫が地面に落ちる。 お父さんの背後には邪悪な黒い影。 私は知ってる。 この後どうなるのか。 だめよ。 いや…。 お父さん!! 「瑠璃」 誰かに呼ばれて目蓋を開く。 視界に映る母の梨香は眉間に皺をよせてつらそうな顔をしていた。 「お母さん…」 不意に涙が滲みそうになった瑠璃は腕で目をこする。 「…大丈夫?」 「うん。大丈夫だよ?」 だから そんな顔しないで。 梨香が離れた気配を感じて瑠璃は起き上がる。 当たりは薄暗いがどうやら自分の部屋のようで時計を見ると朝の5時をさしていた。 「あれ…私」 「お父さんの夢、見てたの?」 …
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