打て、その心臓を

1/6
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

打て、その心臓を

    がたがたと震えて照準が合わない。 うっすらと微笑を浮かべる目の前の上官に、私は情けなくも恐怖を感じていた。 今そこにいる上官は得意な日本刀も、銃も持ってはいない。 武器といえるものはひとつも身に着けてはいないというのに、ただそこにいるだけで怖いと思った。 「さあ、打て」 少し枯れた低めの、決して耳ざわりではないテノールの高さの声で彼は言う。 何人殺したかわからない手で、心臓の位置をおしえる。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!