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打て、その心臓を
がたがたと震えて照準が合わない。
うっすらと微笑を浮かべる目の前の上官に、私は情けなくも恐怖を感じていた。
今そこにいる上官は得意な日本刀も、銃も持ってはいない。
武器といえるものはひとつも身に着けてはいないというのに、ただそこにいるだけで怖いと思った。
「さあ、打て」
少し枯れた低めの、決して耳ざわりではないテノールの高さの声で彼は言う。
何人殺したかわからない手で、心臓の位置をおしえる。
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