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奈菜子はちらっと振り返ったが、声をかけてきたのが大地だと分かると興味をなくしたのか視線を目の前の炎に移した。
近くにあった機械の部品などで周りを囲い、その真ん中で物を燃やしていた。
それはキャンプなどで見かけるたき火に近いかもしれない。
実際初めて見た時大地はのんきにたき火をやっているのだと勘違いした。
しかし違っていた。
たちのぼる煙はどす黒く、素人目に見ても有毒そうだと分かる。
スナック菓子の袋、発砲スチロール、ペットボトル。
普段燃やすことのないもの、燃えないごみを彼女は燃やしていた。
大地は初めて奈菜子と会った時のことを思い出していた。
奈菜子のしていることに気がついて呆然としていた時、大地は初めて奈菜子から話かけられた。
奈菜子は科学物質が出す黒煙と炎を恍惚と見つめながら無機質な声で、だけどどこか楽しそうに、
「ねぇ、知ってた? 燃えないごみって燃えるんだよ」
それが大地と奈菜子の出会いだった。
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