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ゆらりと立ち上がる背中の男。
「おき、た…ほどほどに、しろっ」
「良いんですか?あなたの身体に傷でも残ったら、あなたの貰い手がいなくなりますよ。まあ、まずその口調から変わらなければ…ですが」
「……沖田ッ」
沖田の背後を狙う、無数の人物。
「…ってぇ、油断すんじゃねぇ…っ」
自らの身を呈して、斬り倒す。
腹から流れ出る血がどっと溢れ、貧血気味になった男がその場に崩れ落ちた。
もう、刀を持てる握力すら限界に近い。
「さて、屯所へ帰りますよ」
よっこらせっと、動けなくなったそれを肩に担ぐ。
「ま、まだ残党が…っ下ろせってめぇに刀向けたこと、後悔させてっ」
追っ手を巻き上げるには、容易すぎたようであっという間に人垣が見えなくなる。
そして、闇夜に2人だけが浮かぶ。
「今のあなたでは何もできなかったでしょう?気持ちだけ受け取っておきますよ」
ああ、と思い出したように沖田は付け足した。
「貰い手がいなくても、僕が貰いますから」
男…もとい女は、揺れる背中で赤面する。
「ばっ、局中法度に背く…だろうが」
「僕に意見したら斬り伏せるんで大丈夫です」
女には沖田の表情が分からなかったが、笑っているのだと直感した。
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