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アルビオンで純血種以外のドラゴンを見る事は殆ど無い。
精々が毛刈り用の羊竜(サーファークシープ)に、毎年生え変わる角を採るための山羊竜(コルノゴート)系統の掛け合わせ程度だ。
「花龍は竜の掛け合わせに関しちゃあ何処よりも先進国だからな。後はウィングエビルとバンクナーガで青龍、エッジ・タイガーと白秋で白虎、ダイナタータスとスコロスネークで玄武なんてのも居たな」
ほらよ、とダンカンが携帯端末を操作して当時の画像を見せてくれる。
あんまり端末の性能が良くなかった頃に撮られた画像は白黒で荒れていて、それでも極力詳細が解るようにと苦心しながら撮影したのが良く判った。
ヴォルケーノネイルの血は入っていないのか翼指と翼爪は持ってないとはいえ、正にロゼの未来予想図とも呼べる姿が其処にあって知らずの内に眉間に寄っていた皺が弛む。
「何でも羽毛竜と鱗竜の雑種は羽毛竜の血の方が強く出る傾向があるらしくてな。そいつぁ確かフェザーとグレンフェザントの掛け合わせだった筈だ」
「………あぁ本当だ、脚の蹴爪にグレンの面影がある。良く見りゃ尾羽の付け根辺りもちょっと盛り上がってんのな、グレンらしく飛ぶのに向いた体型じゃない。色無いのが惜しいなぁ、せっかく良く撮れてんのに」
グレンフェザントは飛竜型のドラゴンでは非常に珍しい、地上戦にとことん特化した種だ。
脚に付いた大きな蹴爪が特徴で、飛ぶのは苦手だが脚力が強く、その闘争能力は地上戦にさえ持ち込めば獣脚の大型種さえ蹴爪の一撃で仕留めてしまう。
同種間でも平然と争う凶暴性はヴォルケーノの比ではなく、その習性から花龍を含めた限られた地域にしか生息しておらず個体数もあまり多くない。
竜の事になると性格が変わるのはとことん父親譲りだなと思いながら、目を輝かせて画像を食い入るように見つめるキアに溜め息を吐く。
漸く来た警軍に泥棒を引き渡し、工房の中に投げてきてしまった道具を取りに戻る。
警官の若い男は見たこともない真っ赤な鳥竜に一瞬ギョッとしたが、先輩と思しき警官に催促され慌てて一礼してから仕事に戻った。
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