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マージは妙な所で単純な所がある。
変な所で義理も堅い。
「そーいや、親父殿は元気か?」
思い出したようにキアが聞く。
一瞬何を聞かれたのか解らなかったマージは、三秒空けてから反応した。
「えぇ、ダーリンなら元気よ?またお世話になる感じ?」
「ああ。二ヶ月経ったら顔出すから、1センチの有袋竜の鞣革(なめしがわ)を有りったけ用意してくれって伝えといて」
「有袋竜?」
「どうせドラゴン関係は基本的に経費から落ちるから、幾らかかっても良いって言っとけば親父殿が勝手に集めてくれっからさ」
「OK。任されたわ。またね、ロゼちゃん」
軽くウィンクをして、嵐は去っていった。
ウィンクされた幼竜はと云えば。
「…………気持ちは解るぞ。俺も背筋凍ったからな」
石のように硬直した幼竜に、キアは慰めにならない慰めの言葉をかけた。
‡‡‡‡‡‡
「ジオか………」
玄関に置かれた自分の物ではないブーツを見て、キアは片眉を上げた。
キアの物と同じ軍から支給されているブーツで、キアも一応三足持っている。
しかし今履いている以外の二足は綺麗にブーツラックに掛かっているから、これはキアの物ではない。
「んぉ?お帰り~」
「いつも勝手に入るなって言ってるだろっ!」
リビングから顔を出した黒髪の青年に、キアはつい怒鳴ってしまった。
青年はニヤニヤ笑って、軍服の胸ポケットからカードキーを取り出す。
「だったらオレらに合鍵くれなくたって良いじゃん?後でヨハンも来るから」
「マジか………」
「二人でキアの晩飯突撃しようぜって」
「帰れ!!」
気の良い幼なじみは、これから飲もうとしていたのだろう。
持ち込んだらしいビール缶を右手に、チータラの入った袋を左手に、わざわざ廊下まで出て来た。
ジョナサン=アルハンブラのブーツを部屋の外に出してから、キアはブーツを脱いで上がる。
「お前………相変わらず容赦ねーのな」
ヨヨヨと泣く振りをするジョナサンの襟章は、キアより一つ上の中尉だ。
戦場帰りらしいジョナサンの服は、僅かに煙の臭いがした。
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