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先に食べるとジョナサンが五月蝿い。
そうなってしまえば先程の二の舞になるのは目に見えているから、キアもヨハンも大人しくソファーに座り込む。
同郷同期の三人は、互いに性格や手口を知り尽くしているから無駄な事はしない。
「最近の竜研の話聞かないんですか?」
「竜研がナニしてよーと考えてよーと俺には関係ねーよ。なぁロゼ?」
「ピアッ?」
解っているのかいないのか、ロゼは首を傾げた。
ヨハンは盛大な溜息を吐く。
「大臣がバーティミアスになってから、王は大臣の言いなりだ。これで花龍(ファロン)までが敵に回ったら、アルビオンは負け―――」
「―――ハィストップ、ヨハン=マールフェルア君。貴族のオマエがンな事言ってたら元も子も無いぜ」
勝手にキアの部屋着を拝借したらしいジョナサンが、髪を拭きながらリビングに入って来る。
知ったようにタンスを開けて煙草と灰皿を出すと、煙草をくわえて火を点けた。
「ま、確かに花龍は敵に回ったらおっかないわな。三人でどっかに亡命でもすっか」
「ジオ、お前が言ったら冗談にならない」
鍋の蓋を開けてポトフを皿に盛り付けながらキアが横槍を入れた。
有言実行を座右の銘としている幼なじみが半年前に、上官を「殴ってくる」と言って本当に殴ってきたのは、二人の記憶に新しかった。
その上官の出した"不始末"を片付けたジョナサンとしては当然の権利なので、不問に付されているが。
「我らがアルビオン王国も末かねェ。ドラゴンと魔法使いだけじゃ政治はやってけねーんだぜ」
「俺は魔法使いが嫌いだ」
口を開かせれば1時間は五月蝿いであろうジョナサンに皿を渡して黙らせ、キアはジャガ芋にかじりついた。
「何かと言えば占い、占い。現実を見やがれ」
「キア、僕らに言われても………」
苦笑いしながらヨハンがスープを啜る。
その隣で、ロゼがリンゴの紙袋を漁っていた。
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