雑種の竜

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どうやらフェザーレアの血の方が濃いらしい雑種の竜は、肉食よりも果実食の方が強いらしい。 最初のシチューもどきを食べた後、馬肉には見向きもしない。 「ちょっと良いかな?」 ヨハンがロゼを抱き上げて膝に乗せると、羽毛に埋もれた体を触り始める。 くすぐったいのかリンゴを投げ出してクニャクニャと体をよじるロゼの頭を、キアが撫でた。 「ヨハンは竜医の卵だから、お前が気になるのさ」 「うん。痩せすぎてるけど、それ以外は何とも無いよ。カロリーと運動量さえ増やせば直ぐに肉が付く」 ポフンと音を立ててキアの膝に置かれたロゼは、緋色の目を白黒させて主を見上げる。 ズズッとジョナサンがスープを飲む音で我に返ったのか、幼竜はピーピーと甲高い鳴き声を上げた。 「ロゼ」 「ピィ!!」 「うわっ」 飛び付かれたキアが、後ろに倒れて頭を床に打ち付ける。 その上で情けない声を上げる幼竜は、大人を軽々と振り回した竜と同一とは到底思えない。 「ピー、ピィー」 「判った!判ったから下りろロゼ!!」 何が判ったのかはキア本人知る良しも無いが、ロゼは大人しく下りた。 今だ肋骨が圧迫されているような鈍痛を覚えながら、キアは胸を押さえてベッドに寄り掛かる。 「………先ず教えンのは決まったな」 最悪の状況を冷静に考えてしまい、背筋がゾッと凍り付いたジョナサンがキアに言う。 ゲホゲホと咳込みながら、キアはそれに相槌を打った。 ‡‡‡‡‡‡ 次の日、キアとロゼは八号厩舎のパドックに居た。 使い込んだマスケット銃を肩に掛け、幼なじみの二人が来るのを待っていた。 「やぁメイジ。久しぶりだな」 「………なぁキア。俺へのモーニングコールは?」 「知るか」 巨大な双角を頭に生やした獣脚竜が、背中から尾の付け根まで伸びた皮膜を羽ばたかせながら降り立つ。 鞍を着けていないにも関わらず、ジョナサンは無口だけで平然と乗っていた。 竜と乗り手に負担を掛けない為の鞍だが、互いに馴れてしまえばこんなものだとキアは思う。 流石に戦場で鞍を着けない事は無いだろうが。
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