雑種の竜

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「ルールは?」 「いつも通り。相手のドタマにぶつけた方の勝ちって事で。あ、でも今日はメイジを狙うなよ」 言い様、ジョナサンは体を左に軽く傾けた。 メイジがそれに従って左翼を下げて下降する。 キアは左に上昇させた。 円を描くように、グレイファルコが上層からメイジを追う態勢になる。 ドラゴンの空中戦は一般的に、相手より上空に居る方が有利だ。 しかも飛竜は、下に居れば居る程不利になる。 しかしそれはあくまで一般論だ。 ジョナサンは突如メイジを失速させた。 直線飛行に優れる為スピードを抑えにくいグレイファルコは、簡単にメイジを抜いてしまう。 「チッ!!」 ドラゴンの体を右に傾けた直後、キアの左を弾が通り抜けた。 下を見遣れば、してやったりとばかりに嫌味な笑いを浮かべるジョナサンが煙を上げるマスケットを構えている。 グレイファルコを下降させつつ左回りに旋回させてメイジの背後を狙うが、どうしても追い抜いてしまう。 「………"アレ"、やるか」 一人ごちて、キアはグレイファルコを再び上昇させた。 グレイファルコがリードしている状態で、ジョナサンが銃を撃つ。 掠めればそれなりにヒヤリとするが、ルールは相手の頭をペイントする事だ。 頭さえ当たらなければどうと言う事は無い。 既に五発のマスケットを空にしたジョナサンは、新たな銃を抜く。 手綱から片手が一瞬離れた。 その隙を狙って、キアはグレイファルコを急激に地面スレスレまで下降させる。 それを見たヨハンが口許を緩めた。 「エアリアルスライド。ジオの負け」 ギリギリまで降下した為に、グレイファルコが自制でスピードを落とす。 それによりメイジの斜め下後ろに回り込み、キアが肩に下げていたマスケットを構えた。 ジョナサンが慌ててメイジを上昇させ、スピードを上げる。 しかしその頃には、グレイファルコは自慢のスピードでメイジの頭上を抑えていた。 ニヤリとキアが笑う。 「俺の勝ち」 バチンと良い音がして、真っ赤なインクを詰めた弾がジョナサンの頭頂部で弾けた。
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