雑種の竜

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ヴォルケーノネイルは飛竜の中でも大型で、機動性を維持したまま重装をさせられる。 対して小型種のフェザーレアは戦闘力は高めだが、羽毛が痛むと飛行不可になる為重装をさせる事が出来ない。 軽装ですら命取りになる事がある為、軍用として使役するのは難しい。 恐らく竜研は、見た目がヴォルケーノネイルで中身がフェザーレアと云う飛竜を作りたかったのだ。 しかし生まれてきたロゼは端々にヴォルケーノネイルの特徴を残しただけで、フェザーレアの血を濃く引き過ぎていた。 「可哀相になァ、オマエ」 「ピアッ?」 芝生に俯せて缶珈琲をジョナサンが煽る。 既に半分も入って居なかった中身を飲み干して、行儀悪く缶を投げ捨てた。 「アルビオンは雑種がご法度なのさ。オマエも飼い主も叩かれンな」 「"飼い主"が目の前に居るのに言う事ですか?それ………」 ―――スパーーーン ヨハンが言うが早いか、ジョナサンの額で赤インクが弾けた。 真っ正面に座るキアのマスケットから、僅かな煙が上る。 「オマっ………いくらなンでも痛ェっての…」 「今のはジオが悪い」 黒髪がペンキをひっくり返したように赤く染まり、流してこようとジョナサンが立つ。 従ってメイジも立ち上がったが、無口を引いて座らせた。 ドラゴンを無口と手綱だけで御するのは困難だと言われるが、幼い頃から共に育ってきたジョナサンとメイジには関係ない。 その気になれば、無口すら要らないかもしれない。 付いて行きたそうにジョナサンを見上げていたが、やがて諦めがついたのか前脚に頭を載せてうたた寝を始める。 ジョナサンが消えたのを見計らって、ヨハンが口を開いた。 「覚えてる?ジオがメイジ連れて来た時」 呆れた声音に、キアはカラカラと笑うしかない。 あの時の事は、呆れられて当たり前だったのだから。 「『拾った』って、捨て犬拾ってきたみたいな言い方してた。暫く声が出なかったな」 「ええ。いつもは真っ先に来るジオが来なくて二人で心配してたら、まだ小さかったメイジを抱いて来ましたよね。泥だらけで」 「あー、うちのジジィが風呂に無理矢理突っ込んだな」 「それで着替えのキアの服が小さくて、袖と裾が………プププ……」 「言うなっ、それ言うな!」 黒歴史をバラされる前に、ヨハンの口にコーラの缶を押し付ける。 歯が当たったのか眉を寄せたが、口に含む。
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