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隠す事を諦め、キアは肩を落とす。
「…お前は俺にどうしろと?」
「禁煙しろと」
罪悪感など微塵も持ち合わせていないであろう幼なじみの笑顔に、軽く青ざめる。
ジオの所に置かせてもらおうか―――そう考えてから、激しく頭を振る。
自分が吸う前に吸われてしまうのは目に見えていた。
一時間に一本以上のペースで消えていくジョナサンに預けてしまえば、これ幸いと彼の肺に消えてしまうだろう。
ガックリうなだれたキアの膝の上に、目覚めたロゼが座ってリンゴを催促するが、残念ながら今は無い。
というより煙草の処遇に気を取られ過ぎて、ロゼ自体に気付いていない。
「…………ピアッ!!」
「ぐはっ」
ゴチッと良い音がして、キアが顎を押さえながら後ろに倒れた。
幼竜とはいえ、ドラゴンはドラゴンだ。
頭突きされれば相当痛いし、尚且つロゼはまだ手加減が出来ない。
気付かないキアが悪いから同情の余地無しと、ヨハンは溜め息を吐いた。
「ロゼ君、あんまり力任せにやっちゃうとキアが死んじゃいますからね」
「ピア?」
解ったのか解っていないのか、ロゼは首を傾げさせる。
そんな様子を観ながら、ヨハンが未来予想図を組み立てる。
きっと、傍目からはフェザーレアの色違い程度にしか見えないだろう。
今は長い尾は蛙の様に短くなって、体長よりも長い尾羽根が伸び出してくるに違いない。
はて、とヨハンは考える。
かつて花龍には、こんな幻獣が居なかっただろうか。
どうも自分達アルビオン人は、この手の話に興味が有り余っているらしい。
「将来が楽しみですね」
「……ピ?」
チョンチョンと動かないキアを突いて、ロゼは首を傾げた。
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