竜の眠る場所

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ロゼの引き手を引いて、キアはロドニアの街を歩いていた。 三ヶ月の時が経ち、骨格もしっかりして訓練に耐えうる程には成長したロゼは、大人しくキアの右側をノソノソと歩く。 フェザーレアの若竜にしては大き過ぎる巨体を受け止める石畳は随分と年季が入っていたが、日常的に大型獣脚竜等が通る道に飛竜一頭が通った所で、何か問題がある訳でも無い。 珍しい紅い鳥竜とすれ違う人々が、よく見ようと振り返るのをロゼはうんざりしたように首を軽く振った。 宥める為に耳の房羽根の根本を掻けば、ブルブルと体を揺すって足を進める。 目的の竜具工の工房は、ロドニアの外れに在った。 日頃体力が有り余っているロゼの機嫌が良かったのは、厩舎を出てから僅か十五分足らずだ。 好奇の目に曝されてしまい、短気な性格のロゼは嫌だと言うのを態度で示す。 ガチャガチャと引き手の鎖を嘴で引っ張る為、無口の顎にナスカンを付け替えたのは20分前。 「……おいロゼ、もう少しだっつの」 力加減を覚えたとはいえ、ドラゴンに引っ張られればキアでもよろめく。 グイグイと頭を上げられては、進む事もままならない。 ご機嫌取りの為に持って来たリンゴは、バックパックに残り僅かしか無い。 「……ビィ…」 威嚇するかの様に鼻から煙を噴いて羽根を逆立てながら歩くロゼの頭からは、力加減という行動がそろそろ消えつつある。 バチンバチンと嘴が良い音を立てて打ち鳴らされ、キアは頭を抱えたくなった。 軍属の竜具工に受注すれば連れ回す必要も無いのだろうが、それは一頭目のドラゴンで止めている。 最初の相棒はミストワイバーン―――ジョナサンの様に実家から連れて来た綺麗な水色の鱗の飛竜だったが、軍属の竜具工の竜具では鞍擦れが酷かった。 長期化しなければ大した事の無い鞍擦れだが、いくら手直ししても一ヶ月持たないのであれば意味が無い。
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