王子様

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目が覚めると、ママがいた。 「風邪よ、最近ちゃんと寝てた?」 「…」 「昨日、雪斗が抱えてきた時はびっくりしたわ。さっきまでずっとちゃこの看病していたのよ」 おにいちゃんがいないことにホッとした。 時間が気になって時計をみると、15時。 (すごい寝てたんだ) 携帯をみると、もっちゃんからのメールが2通きていた。 1通目は気遣ってくれるメール。2通目は…。 (橘くんがすごく心配しているので、一緒にお見舞いに行くことになりました、って…) もっちゃんには悪いけれど、誰かと話したりする気分じゃない。 ましてや、橘くん。 彼を家にいれることで、おにいちゃんが傷つくことはわかっている。 「橘くんが、すき」 嘘を口にする。 いつか本当になるように、何度も何度も呟く。 「すき…うう…」 だめだ。すき、という度におにいちゃんの顔がちらつく。 最後にみたおにいちゃんの顔。 (ごめんなさい) 涙が止まらない。 「橘くんが、すき」 私は泣きながら、自分に言い聞かせた。
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