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「誰か気付いてくれないかな?」
独り言……にしては大きすぎる声で呟いた彼女は雑踏の真ん中に立っていた。
一団となって、談笑しながら歩く周りの人達は、明らかに通行の妨げになっている彼女に気付くことはない。まっすぐに歩き、彼女にぶつかってもただ擦り抜けるだけ。まるで何も無いかのように――
いや、正確には彼女がこの世に存在していないが正解だろうか。
そう、彼女はこの次元にいるべき存在ではないのだ。
人はそれを、神、天使、悪魔、霊、妖怪……と様々な言葉で言い表わすだろう。
彼女は認識されない。もちろん、大多数にとってはだが――
彼女がこう大声で呟いたのは、彼が高校一年生の夏の出来事だった。
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