出会い

2/11
前へ
/20ページ
次へ
「誰か気付いてくれないかな?」 独り言……にしては大きすぎる声で呟いた彼女は雑踏の真ん中に立っていた。 一団となって、談笑しながら歩く周りの人達は、明らかに通行の妨げになっている彼女に気付くことはない。まっすぐに歩き、彼女にぶつかってもただ擦り抜けるだけ。まるで何も無いかのように―― いや、正確には彼女がこの世に存在していないが正解だろうか。 そう、彼女はこの次元にいるべき存在ではないのだ。 人はそれを、神、天使、悪魔、霊、妖怪……と様々な言葉で言い表わすだろう。 彼女は認識されない。もちろん、大多数にとってはだが―― 彼女がこう大声で呟いたのは、彼が高校一年生の夏の出来事だった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加