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日曜日。
あたしはリョウと原宿の代々木公園に来ている。
『久しぶりだね~写真撮ってもらうの』
「そうだな。あ、もうちょっと右向いて」
『こんな感じ?』
「そうそう、もっと笑ってみ、思いきり」
『こうかな…?』
「叶美はもっと表情豊かだったよ」
『うるさいなぁ~もぉ~叶美さんのことは言わない約束でしょ!?』
「あぁ、ごめんごめん…」
リョウはポリポリと頭を掻き、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
『いいよ~もう。許してあげる!!』
照り返す太陽と、ビードロのような青空の下、あたしたちは撮影をしていた。
「締め切りいつなの?」
『来週の今日だよ。』
「じゃあ急いで現像しなきゃじゃん!」
リョウはデジカメとかではなく、本格的なカメラで撮影するのだ。
『なんか、懐かしいね。初めて会ったときのこと思い出すね。』
「オレが趣味で撮影モデル募集してたら、蜜歩がメールくれたんだよな。」
『そうそう。最初、どんな人が来るんだろ~!?って超恐かったんだよ。ネットで知り合って会うのなんて初めてだったし…』
「はは、蜜歩、すげー緊張してたよな~」
あたしはリョウと初めて会ったときのことを思い出していた。
オーディション用の宣材写真が欲しくて、でもスタジオに行って撮ってもらうほどのお金がなくて、どうしようと悩んでいたときに、たまたまインターネットの掲示板でリョウの書き込みを見たのだ。
ネットを通じて会うなんて、初めての体験で、あたしは本当にドキドキしたのを今でも覚えている。
何度かメールでのやりとりをするうちに、悪い人ではなさそうだということは分かったけど、でも実際に会うとなると、やはり恐かった。
でも実際に会ったリョウは、すごく優しくて好青年て感じで、あたしは自分でも気づかないうちに、どんどん惹かれていったのだ。
「なに、ボーっとしてんの?」
『ううん、ちょっと昔のこと思い出してたの!』
「どんなこと?」
『内緒~』
あたしは唇に人差し指を当てると、くるっと向きを変え走り出した。
「あ、ちょっと待てって、教えろって!」
あたしたちは撮影をしながら、楽しい時間を過ごしていた。
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