あたしは元カノを許さない。

【本編】

「非通知拒否・着信〇件」という気味の悪い単語の繋がりを、相手の携帯画面に表示させることに意味があるのだ。

「非通知」の電話が短時間に何度もかかってきたら、誰だって気味が悪いだろう。

そんな精神的にじわじわと追い詰めるような嫌がらせを、あたしは「叶美」にしていた。

以前、リョウの携帯を隠し見たときに「叶美」のメモリーを控えていてよかった。

まさかこんな使い方をするなんて思ってもみなかったが、ねっとりとまとわりつくような異常な快感が、あたしの脳内を駆けめぐっていた。

そしてあたしは、この快感を忘れることができず、この後何日も、まるでそれが決められた日課であるかのように「非通知電話」をかけるのだった。

それは、待っても待っても返信をよこさない「叶美」に対する罰のようでもあった。