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5分咲きだったサクラがいつの間にか散り、花粉を運ぶ風も弱まりを見せ、世間が黄金の週間に向けて、浮足立つ頃。
季節が少しずつ変化をする中で、あたしの生活もちょっとした変化を見せていた。
あたしは今、自分の番号が呼ばれるのを、のどをカラカラにして待っている。
今日はモデル事務所のオーディションの日なのだ。
「39番の方お入りください」
『はい!』
あたしは大きな声で返事をし、面接が行われている部屋へとコマを進めた。
あたしの未来が決められようとしているその部屋は、思ったよりも狭く、壁も床も天井も真っ白で、まるでケーキの箱の中にいるみたいだった。
蛍光灯の明かりが反射する中、3人の面接官たちがあたしの身体を舐めまわすように見る。
あたしは言われる通り、後ろを向いたり、ウォーキングをする。
もういいですよと言われ、面接官と向き合うように置かれたパイプ椅子に、あたしはようやく座ることができた。
面接官は、手元にあるオーディション用紙を見ながら、いくつかの質問を投げかけてくる。
あたしはその質問にひとつひとつ答えていく。
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