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何かを告げるような奇妙なお天気雨が降る次の日の朝、それは突然の出来事だった。
あたしには、今なにが起きているのか、さっぱり分からない。
リョウからのメールを待ちぼうけしていたあたしに、突如、悪夢が襲い出したのだ。
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題名∥Re:
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ごめん。もう会えない。
好きな人が出来たんだ。
本当ごめん。
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あたしは驚きのあまり、床に携帯を落としてしまった。
が、すぐさま拾いあげ、リョウに電話をする。
が、繋がらない。
何度電話をしても、留守番電話サービスシステムに繋がるだけだ。
これじゃあ埒が明かないと思ったあたしは、直接リョウに会うため、家を飛び出した。
今日は土曜日、リョウは休みのはずだ。
あんなメール1通で、あたしが納得するとでも思ったのか。
よく男は“メール”で終わらせようとするらしいが、あたしにはその心理が理解できないでいた。
でも、正直そんなことはどうでもいい。
あたしはリョウのことで身も心もいっぱいだった。
大好きなリョウを失うかもしれない恐怖に、ガラスの心はただただ怯えていた。
リョウの家に着いたのは、お昼を過ぎる頃だった。
あたしはドアの前に立ち、深く深呼吸をする。
そして、震える指先を抑えながら、ゆっくりとチャイムを鳴らした。
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しかし、リョウは出ない。
あたしはもう1度鳴らす。
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やはり出ない。
どこかに出掛けているのだろうか。
しびれを切らしたあたしは中で待つことにし、合い鍵でドアを開いた。
リョウの部屋を出入りするのは、いつものことだ。
あたしが玄関で靴を脱ごうとしたその刹那、真紅のハイヒールが目に飛び込んできた。
警鐘を鳴らす音が耳に響く。
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