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それはとある夜の事。
今夜は美しい月と星空を見ながら、庭園にてワインを飲みたくなったのもあり、僕は軽い足取りで部屋を出ると、庭園へと向かった。
見張り兵に労いの言葉を掛けたりしながら、庭園へと足を踏み入れる。
美しく手入れされたこの庭園、実は密かなお気に入りの場所なのです。
鮮やかに咲き誇る花々が、目も身体も心も癒やしてくれる様でして、隙をみては、よく1人で此処に来るんですよ。
とは言え、今は深夜なのもあり、日中なら美しく咲く花達も、今は静かに蕾を閉じ夜明けを待っていますけどね。
そんな中を、僕は慣れた足取りで中央の噴水前まで来ると、こんな夜中だと言うのに人影が1つ目に入った。
…こんな時間に先客ですかねぇ?
首を傾げながらも、こんな深夜に誰がいるのか興味深くなり、その人物の近くまで近付く。
すると僕の気配に気付いたらしく、相手が此方を振り向いた。
振り返るその仕草に、相手のフードが軽く風に揺れ、フワリと翻させながら。
?………。
何かどこかで以前も見た様な光景な気がします。はて、既視感でしょうか。
「っ……不死者か」
「おや、フェルトさんでしたか。ごきげんよう」
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