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―六月 梅雨―
中間テストが終わった休み明け。湿っぽい空気が窓の外から流れて来ている。
皆ちらほらと夏服を着て僅かな開放感に浸る中、俺は長い袖のカッターシャツを着ている。
別に暑くないとか苦難を快感に感じる性癖を持っているわけでもない。
俺は所謂アルビノというやつだ。
血管が透き通る様な白い肌、白髪、赤い瞳。
皮膚が弱く夏の太陽なんか目も当てられない。
この見た目のおかげで昔は虐められたものだが、今は切れ長の目つきで逆にビビられる。
何やらドドドドッという足音と黄色い声の群れが近付いて来ているが何時もの事なので無視して本のページをめくった。
後方の教室のドアから一人の男子生徒が滑り込み、鍵をかけて俺の机の脇で丸くなる。
ドア側からはちょうど姿が見えない。
すると廊下側の窓から女子の集団が覗き込み、俺の机の脇で丸くなる男がいるか聞いていた。
やがてチャイムが鳴り、女子の集団は諦めたように散って行った。
「もう行ったぞ」
久峨音玄は机の脇で丸くなる男、鶴賀真水(ツルガシンスイ)に話しかけた。
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