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こうやって女中兼隊士兼小姓の藍川直が出来上がった。
気を抜いたらポーンと首が跳ねる仕事ですが、そんなもんにビビる程の繊細な神経はございません。
全力で吉田稔麿様を幸せにしたいと思います。
「俺より先に起きる。俺を動かさない。俺の生活に必要は備品は切らさない。俺が呼べば十以内に来る。俺が命じれば火の中水の中突っ込む。俺の命令は絶対」
……意気込みが無茶苦茶な決まりに萎みました。
風船が萎むようにショワショワと。
「……ハードル高すぎんだろ」
「何か言ったかい?」
「いえいえ滅相もございません!! 全部完璧にやり遂げたくて意気込んでるのであります!!」
だから額に食い込んだ刀をどけてくれ!!
マジで串刺しができあがっちゃうから!!
小さくぼやいたというのに、聞き取った吉田稔麿様はかなりの地獄耳だよ。
これでは愚痴もこぼせないな……。
「じゃあ早速、俺の荷物を片付けといて」
「部屋はどこですか?」
「昼すぎだというのに布団が敷きっぱなしの部屋だよ。あそこは俺の部屋だというのに、誰かが許可なしで使ったようだね」
「…………」
うちが使いました、なんて言えねえ。
晋作さんを見れば目を泳がしている。
ここはこの場の空気を読んで黙秘発動!!!!
「早く俺の命令に取りかかってくれない?」
「ハッ!? りょ、了解しました!! 綺麗サッパリ片付けてきます!!」
刀の切っ先がやっと額から退かされ、慌てて駆け出した。
雑巾がけが途中だけど、そんなもんより吉田稔麿様の命令の方が断然優先事項で。
優先させないと首が胴体にさよならを告げそうだし。
こりゃあマジで一瞬でも気が抜けなくなってしまった。
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