思ったら一球入魂……じゃなくて一振入魂!!

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俊はうちの部屋のベッドに腰掛けると、ベッドの隅に積み上げられていた漫画をペラペラとめくり……放り投げやがった。 しかも鼻で笑いながら。 「姉ちゃんの漫画雑に扱うなよ!?」 「姉貴のだからいいじゃん」 よくねぇぇぇ!! 「にしても、何回見ても同じとこで泣くのな」 太股に肘をたてて頬杖をつく俊は、さもつまらなさそうにテレビの画面を見つめる。 つまらなさそうな顔に少し……いやかなりイラッとくるけど、今はそれどころじゃない。 テレビには一番の盛り上がり場である池田屋事件が映しだされていて、そして……そして……。 「ぐはぁぁぁ!! もう直視できないぃぃぃぃ!!」 二十四の若さで新撰組に斬られて死んでいく吉田稔麿役の俳優。 顔を両手で覆い隠しながらも指の間からそれを見て、止まっていた涙がぶわぁっとまたでてきた。 うちは毎回吉田稔麿の死ぬシーンで号泣。 それはテレビだけでなく、漫画や小説でも同じ。 池田屋事件で必ず……120%の確率で泣いているのだ。 「……新撰組が死ぬシーンでは泣かねえのに、なんで吉田ん時はぶっさいくな顔して泣くんだよ?」 ……一言余計じゃね? まぁ確かにうちは美少女って程じゃないけどさ。 イケメンの弟に言われるとちょっと傷つくんだけど。 血が繋がっているのになんで弟はイケメンで、うちは普通の分類の顔なんだ? 神の嫌がらせかな? ……て、話が脱線してる!? 吉田稔麿の死のシーンで泣くのは、勝手にうちが不安になって心配しているから。 勝手に妄想しちゃってるからなんだ。
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