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「……吉田稔麿って、幸せだったんかな?」
そう、うちの勝手な不安とは二十四の若さで死に、今ではやられ役となっている吉田稔麿は生前幸せなのか、というもの。
「とっくの昔に死んだ奴の幸せなんか知らねえよ。現代っ子には関係ねえ話だし、生きてた時には少なからず幸せってあんじゃねえの?
姉貴が心配しなくてもいいだろ」
「…………」
俊の言っていることは正論だと分かっている。
吉田稔麿は、今や歴史上の人で現代人であるうちには関係ない話。
……てか関係できない話で。
二十四年生きていたら幸せに思うことはいくつもあったに違いない。
二十一になったうちでさえ数え切れない幸せを味わってるんだし、きっと吉田稔麿も味わっているんだとは思うよ。
……でも、でもさ。
新撰組は華やかに描かれているのに、やられ役にされた吉田稔麿を見ていると、チクチクと胸が痒いんだよ。
新撰組のみんなも無念の死をしたかもしれないけど、うちは吉田稔麿が気になって仕方がない。
言うなればあれだ!!
片思いの相手に気持ちを寄せるように気になって……って違うか。
うちは吉田稔麿に恋してるわけじゃないし。
「でも気になるんだよぉぉぉ……」
バナナ型の抱き枕を抱き締めて悶えた。
「それって同情なわけ?」
冷ややかな俊の声に寝転びながらも俊に目を向けた。
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