折れる程弱くはない!!怖がる程繊細じゃない!!

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「直っ!!」 悲しい目をした人と見つめ合っていれば、晋作さんの慌てた声が耳に入ってきた。 そのおかげで妖艶な男の視線は外れ、うちの後ろにそれはいく。 「晋作、久しぶりだね。変な隊を作ったと思ったら、怪しげなものも混ざってる。これは何?」 「そいつは女中兼隊士だよ。怪しい奴じゃ……ねェ筈だ」 …………。 筈って、そこは嘘でも怪しい奴じゃない!! と断言しろよ!! おおおい、と嘆いていれば目の前にある刀の切っ先が上に向かって動いた。 「あ」 それは頭に巻いていた九一さんから貰った手拭いをぴりっと裂き、金のメッシュ入りの茶髪が露わになる。 それを見た妖艶な男の目は更に冷たさと鋭さを帯び、刀の切っ先が首筋に触れた。 「稔麿!! 殺るんじゃねェぞ!!」 「何この髪? 益々怪しいね。幕府の人間? 何を企んでここにいる訳?」 幕府……幕府って、ここの人達は幕府って言葉に敵意を込めている。 何か事情があるみたいだけどそれを知らないうちは疑われるのが当然で、ただ違うと否定するのが精一杯。 「そいつは幕府側の人間じゃねェよ。九一が拾ってきた迷子だ」 「迷子? てことは素性は分からないわけ? そんな怪しいものは排除したほうが身の為だよ。晋作も九一も甘いね」 「稔麿からみたらみんなあめェよ。てめえは厳しすぎんだ。いい加減、刀を引っ込めろ」 「すぐ抜刀する暴れ牛がよく言う」 くつり、と喉を鳴らして口角を上げるけど、目は一切笑っていなかった。 でも……稔麿って……ん? 稔麿……稔麿……。 吉田稔麿っ!!!?
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