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「猫の鳴き声がするんよ。」
いきなり祖母の口から出た言葉に、私は固まってしまった。
かわいいとは思うし、嫌いじゃない。ただ、私は猫が苦手だった。
小さい頃、車に轢かれた猫を見て以来、トラウマになってしまった。
その猫はまだ生きてはいたが、『ア゛ァ…』という、とても猫のものとは思えない鳴き声。飛び出し、潰れた内臓。
その記憶が、未だに消えない。
生きている猫を見ても急に脳内に浮かび上がり、鳥肌が立つこともある。
死にかけの猫の残像には憐れみよりも、恐怖の方が強い。
できることなら、猫のいない世界にいきたいとすら思っていた。
「床の下からね、みゃあみゃあって。」
「そ…、そういえば東側の塀が壊れていたよね。修理、頼もうか。」
「まだ子猫みたいやのに。」
話題を変えようとするが、私の話なんて聞いていない。
しかし、私も諦めるわけにはいかない。
床下のような暗いところにいるなんて、考えただけで怖い。
「あれじゃ、外から丸見えで不用心だよ。
よし、電話帳で修理屋さんを調べてくる。」
そう言って立ち上がった私に、祖母が言った。
「かわいそうに…。加奈ちゃん、埋めてやって。」
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