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グループを離れる。亀から離れる。
メディアが俺について何と書くかぐらい、目に見えていた。
―――赤西、脱退。
それをわかっていながらも、皆背中を押してくれた。
そうして、俺はこのチャンスを掴むことができた。
ふと、日本を経った日、最後に日本で亀と会った日のことを思い出した。
その前の夜は亀と2人で過ごして。
翌朝、亀は俺より先に起きていた。
俺は亀の寝顔が見れなかった、と心の中で軽く舌打ちをしたっけ。
家を出る時、いってこい、と俺の背中を押した亀。
その時はまた明日も会うような、つまりは、いつもと何ら変わらない亀で。
いってくるね、と俺は亀にそう言って背を向けた。
少し歩いて、これからしばらく会えねぇんだな、と思ったら何だかすごい寂しくなって、亀の顔が見たくなって、思わず後ろを振り向いたら、そこにいつもの亀はいなかった。
眉を顰めて目を真っ赤にして、いつから流してたの、涙を服の袖で目を抑える亀がいて。
振り向いた俺に気付いた亀は慌てて涙を拭って、無理矢理笑ってくれた。けど。
いつもだったら、演技だったら、カメラの前だったら、もっと亀は上手く笑えるのに。
その時見た亀の笑顔は、今までで最高に下手くそだった。
『……会いてー。』
何だろう、すごい亀に会いたい。
そしたら、渋る亀の腕をとって、無理矢理にでも腕の中に抱き込んで、耳を真っ赤に染める亀をたくさん甘やかすのに。
もう嫌だ、って亀が顔を真っ赤にして泣きそうになるまで、たくさんたくさん甘やかすのに。
不意に、強い風が一際カーテンを大きく揺らし、窓から差し込む光に思わず目を細める。
“―――おいっ!!仁、早く起きろって!!”
なかなか俺が起きない時、亀は部屋のカーテンを勢いよく開けて、俺を揺り起こす。
突然の日差しの眩しさに俺は小さく唸りながら身をよじって。
“仁!!じーんー!!もう、早くおき、ぅわっ…!!”
俺は寝ぼけた振りをしながら亀の身体を無理矢理腕の中に抱き込んで、良い匂いのする亀の髪に鼻を埋めて幸せの匂いを胸いっぱいにするんだ。
“もー、じん!!”
“じん、起きなって。”
腕の中の亀は、しょうがないなぁ、と笑って、どことなく俺を起こす声は甘くなっていて。
さっきまで俺を起こそうとしていた手は、言葉とは裏腹に俺の服の裾を遠慮がちに掴んで。
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