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オレンジの空がだんだん黒に染まり、日中あんなに騒がしかった教室も、今は自分以外誰もいなくて、閑散としている。
教室が静寂に包まれる中、カリカリと自分の字を書く音だけが響いていた。
1限…数学、2限は体育…。
日直最後の仕事、学級日誌を埋めていく。
あれ、今日欠席した奴誰だったかな?と朝の記憶を思い出そうと頭をひねっていると、
―――コンコン、
と突然乾いた音がして、音がした方に目線を向けると、自分でも無意識に眉間に皺が寄るのがわかった。
「…1人?」
『………。』
教室の入り口に、見知った顔の男が寄り掛かってこちらを見ていた。
3年の赤/西先輩。
どうやらこの人がドアをノックしたらしい。
……この人っていうか、一応、俺の彼氏だけど。
何も言わない俺に先輩は気にもしない様子で、俺が座ってる隣りの席の椅子を持ってきて、俺の机に肘をついた。
『……何ですか。』
先輩の方を見ないで、日誌に視線を降ろしたまま、ぶっきらぼうに尋ねる。
「何ですか、って、亀/梨が昨日も今日も俺のメールをシカトするから、こうやってわざわざ会いにきたんじゃん。
昼休みも来たんだけど、亀/梨いなかったし。」
そう呟いた先輩に、ギクリと肩が揺れて、少し気まずくなる。
そんな俺に気付いてるのか、いないのか、先輩は俺の髪を遊ぶようにサラサラと撫でながら話し続ける。
「…なぁ、この前のこと、まだ怒ってんの?」
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