誰もいない教室で

2/8
前へ
/87ページ
次へ
オレンジの空がだんだん黒に染まり、日中あんなに騒がしかった教室も、今は自分以外誰もいなくて、閑散としている。 教室が静寂に包まれる中、カリカリと自分の字を書く音だけが響いていた。 1限…数学、2限は体育…。 日直最後の仕事、学級日誌を埋めていく。 あれ、今日欠席した奴誰だったかな?と朝の記憶を思い出そうと頭をひねっていると、 ―――コンコン、 と突然乾いた音がして、音がした方に目線を向けると、自分でも無意識に眉間に皺が寄るのがわかった。 「…1人?」 『………。』 教室の入り口に、見知った顔の男が寄り掛かってこちらを見ていた。 3年の赤/西先輩。 どうやらこの人がドアをノックしたらしい。 ……この人っていうか、一応、俺の彼氏だけど。 何も言わない俺に先輩は気にもしない様子で、俺が座ってる隣りの席の椅子を持ってきて、俺の机に肘をついた。 『……何ですか。』 先輩の方を見ないで、日誌に視線を降ろしたまま、ぶっきらぼうに尋ねる。 「何ですか、って、亀/梨が昨日も今日も俺のメールをシカトするから、こうやってわざわざ会いにきたんじゃん。 昼休みも来たんだけど、亀/梨いなかったし。」 そう呟いた先輩に、ギクリと肩が揺れて、少し気まずくなる。 そんな俺に気付いてるのか、いないのか、先輩は俺の髪を遊ぶようにサラサラと撫でながら話し続ける。 「…なぁ、この前のこと、まだ怒ってんの?」
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

514人が本棚に入れています
本棚に追加