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『……。』
先輩の言うこの前、というのは、俺と先輩が喧嘩した(っていうか俺が一方的に怒った)時のことだ。
原因は、赤/西先輩が俺との約束を忘れていたこと。
一応俺の高校は進学校で、ほとんどの生徒が進学をする。
もちろん3年生の先輩は進学を考えていて、今受験勉強で忙しい時期なのだ。
それがわかっていたから、俺はあんまりわがまま言ったりするのは止めようって、学年が違う先輩にはなかなか会えなかったけど、それでも会いたいとは言わないで我慢をしていた。
だから、学校で会える時間や、久しぶりのデートをすごくすごく楽しみで、大切にしていたのに。
…約束の日、先輩はいつまで経っても約束の場所に現れなくて。
電話をしたら、電話からは寝起きの先輩の声が聞こえて、「ごめん、今起きた。」の一言。
毎日の勉強で疲れてるってことぐらいわかっていたけど、
でも、何日も前から楽しみにしていたのに、先輩と今日はずっと一緒だ、ってすごい楽しみにしていたのに。
ショックだった。
何だよ、会いたいって思ってるのは俺だけなの?楽しみにしてるのは俺だけなの?
そんな思いが頭の中をぐるぐるして、今から急いで行く、と言う先輩に来なくていいです、と言って乱暴に電源を切った。
それから今まで、先輩と一切連絡はとっていなかった。
先輩に会いたくても会いたくても、会えない俺の気持ち、先輩にも少しぐらいわかってほしかったから。
「ごめん。ずっと待っててくれたのに。」
『……。』
「この前のお詫びにさ、今日この後どっか行ってデートしよう?」
『……。』
「亀/梨?」
先輩の優しい声に、何か言ってしまいそうになった。
だけど……。…そんなの、…先輩はずるい。
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