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俺はいつも我慢してるのに、先輩だけ会いたい時に会って、デートしたい時にデートして。
そんなの、ずるいじゃん。
そう思うと、俺の中で変に意地がむくむくと顔を出してきて、先輩にもっと俺と同じ気持ちになってほしい、と欲張りになってしまった。
気付いたら口は勝手に動いてしまっていた。
『…先輩、月曜日は塾があるじゃないですか。俺もこれから用事あるし、俺、これ書いたら帰りますね。』
そう言って、俺はまたカリカリと日誌を書き始めた。
用事があるなんて嘘だ。
断る理由を作るために嘘を吐いた。
…それに、先輩が今日塾があるのは本当だし、そろそろ行かないと塾に間に合わなくなっちゃうだろうし。
…これで先輩が俺と同じ気持ちになって、
それで、もっともっと頭の中、俺だけになっちゃえばいいんだ。
先輩が静かに俺を見てるのはわかっていたけど、俺は何も言わないまま、ただ書くことに集中した。
「…用事って何?」
『え?』
少しの沈黙の後、てっきりもう帰るのかと思っていた先輩の声に顔を上げてやっと気付く。
今日、ちゃんと先輩の顔見るの、今のが初めてだ。
先輩は、さっきまでの柔らかい雰囲気がなくて、何だか真剣な面持で俺を見ていた。
「その亀/梨の用事って何?誰かと約束してるの?」
『え?…ああ、そうです、けど、』
用事って言っても何も考えてなかったから、先輩の言葉にただ頷く。
すると、すっと先輩の目つきが鋭くなったのがわかった。
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